上野骨董市の会場風景+上野骨董市日記みたいなのを。

イラン人の日

上野骨董市は40年の歴史があります。
赤ちゃんが立派なおっさんになるだけの期間なのですからそれは色々な事がありました。
その中でも今だによくわからないのが30年程まえに公園がイラン人にほぼ占拠されたようになったあの遠い日々の事なのです。
確かきっかけは代々木公園じゃなかったかと思います。
当時の代々木公園で開催されていた代々木公園フリーマーケット(主催はリサイクル運動市民の会)はとても人気があり一般の参加者だけではなくて古道具から新古品や玩具を扱う専業から半専業みたいな人達まで多種多様な人達が出店していました。
人気が高く応募しても出ることが出来ない事も普通にある事でしたが基本的には電話予約のみだったのでとにかく電話をかけまくるしかなくその為に何台も電話機を買ったんだなんて業者さんも居たくらいです。
その頃出店していた新古品で玩具を扱っていたおじさんが中々出店出来ない事に業を煮やし自分が主催して開催しようと公園に直接交渉してしまったのです。
ところが公園は本来業者さんの営業目的での出店は出来ません。
本当はそこでやめとけば良かったのですがこのオジサンは 「業者がたくさん出ているじゃないか!」と抗議してしかも写真まで撮って「こいつもこいつも業者じゃないか!」
と突っ込んでしまったのです。
当時増え続けるゴミ問題で悩んでいた東京都としてはフリーマーケットが始まった事で都内のゴミが減り年間で少なくとも1000万円分は経費が削減されたという結果が出ていたため公園はフリーマーケットにとても好意的でした。
それもあってとてもファジーでグレーゾーンにして何とか維持していたのですがこのオジサンの行動で代々木公園を含めたフリマを開催している殆どの公園が業者の出店が不可になってしまったのです。
この影響は甚大でオジサンはほぼその界隈では出入り禁止となってしまいました。
それでそのせいかどうかはわかりませんが何故か代々木公園にたむろしていたイラン人の面倒をみるようになりやがてイラン人の父と呼ばれるようになっていたのです。
まあ困っている人達の面倒を見る事自体は良いと思うのですが果たしてそれが必ずしも良い結果に繋がるのかというとそれは微妙なのかもしれません。
なんにしてもオジサンの行動で私達業者が長年かけて作り上げた代々木公園のマーケットを失ってしまったのですから。
この同時期に上野公園でもイラン人が溢れていました。
骨董市をやっている会場の入り口近辺の一番良い場所を占拠して肉を焼いて売っていたり
偽造テレフォンカードを道行く人達に売りつけています。
それが一人や二人ではない集団なので非力な古道具屋さんとしては如何ともし難い状況なのでした。
流石の地回りも見て見ぬふりだしお巡りさんも注意はするけどほぼ放置状態です。
こちらとしても通行人にテレカ売りつけようとして揉め始めたらそれを止める為に介入していましたが言葉もろくに通じないのではやれる事も限られていました。
それがある時を境に波が引くようにいなくなったのです。
今から思ってもあれはなんだったんだろうと。
でも
それから何年かは地方から来た高校生くらいの少年たちが
ここでマリファナ売ってるって聞いたんだけどどこで買えるの?
ときいてくるので
そうか、あいつらマリファナまで売っていたのか!
と皆であきれてましたね。
イランの父はその後どうなったのかはわかりません。
一時期は新聞にまで取材されていたようですが業者としては何処も出入り禁止になっていたみたいでしたし。
果たしてあれからどうなって今はどうしているのでしょう?
公園に文句を言いに行くまでは会場で挨拶する程度だったけど優しげで世話好きなオジサンとして認識していたのですが。
骨董市の思い出

古道具屋になってもう40年近く経ちます。
特に師匠となる人がいた訳でも骨董品とかに興味があったわけでもなかったので全てが試行錯誤の連続でした。

その結果今は現代美術の作家としても活動しています。

しかもそれなりですが知られた存在でもあります。

ですから骨董市にお店を出していると作家としての私に会いに来られる方も少なくありません。

でこれはそんなお話なのです。

今回の上野骨董市は夏休みと言う事もあったようで遠方からファンですと言う方が結構会いに来て下さいました。
それはとても有り難い事ですし嬉しいことです。
暑いなか頑張ってお店を出している甲斐があったというものです。
差し入れ等を頂き持参された「鳥の王」や「がらくたからたから」を鞄から大事そうにだしてサインをとお願いされ あたふたとペンを探してサイン等させて頂いておりました。
でも 基本的に若い女性が多くそんな事情を全く理解出来よう筈もない公園の通行人の皆様には汗マミレで汚いタオルを首にかけた汚れなオッサンが可憐な女性達にサインしたり握手を求められたりしている姿は相当異様であったらしく中にはどうしても気になってワザワザ公園をもう一周して理由を聞きに来たオバさんまでいましたっけ。
そんなある日 いつも値切りにくるちょっと扱いづらいオジさんがお店の前で売り物の万年筆に難癖をつけていたのです。
そこへ見るからに骨董市とは場違いな可憐な女性が現れて挨拶をされたのでそれとなく話していたら私のファンでした。
彼女も会話の流れで私と気がつき「マンタムさんはカミサマです!凄く尊敬してます!」と言ったらそのオジさんが「やっぱりあんたは新興宗教かなにかやってたんだな?こんな若いコまで引きずりこんだらダメじゃないか!いいか?お嬢ちゃんこのオヤジは骨とか注射器とか危ないものばかり扱っているとんでもないオヤジなんだ!!」
そしたら私がなにか言う前にその彼女が
「人を見かけだけで判断したらダメです!!」
そのフォローは間違えてないけど私にも微妙に突き刺さってます。。
そのあと更に凄く気まずい空気が流れて まぁ いつものことですしとフォローをいれたつもりが更に気まずくなって とりあえずサインだけしてあげて。。
ここしばらくはコロナで骨董市もなかったのでもうこういう事もなかろうかとは思うのですが。